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2016年8月16日火曜日

星が一生を終える時


太陽のように明るく輝く星もいつかは燃料を燃やし尽くしてしまいます。しかし恒星の様に大質量の物体は燃え尽きても、そのまま燃えカスの塊として宇宙に浮かんでいることはできません。
そもその恒星が一定の形や大きさを保っていられるのは、重力によって収縮しようとする力と、燃料が燃えて発生する内圧が釣り合っているからです。星が燃え尽きるということは、この内圧が無くなり、重力が梯子を外されたかたちになります。



星が燃え尽きた後どのような道を辿るかは、星の質量によって決まります。

白色矮星

燃料を燃やし尽した星は内圧を失い、重力により収縮していきます。星を構成する物質の密度は高まり、原子を恒星する電子同士がどんどん接近していきます。電子は接近し過ぎると反発力が働くようになります。これを「電子の縮退圧」と呼びます。この電子の縮退圧と重力が釣り合って大きさを保っている星が「白色矮星」です。この状態で物質の密度は、角砂糖一つくらいの大きさで10トン以上という、とてつもない重さになります。

質量が太陽の8倍くらいまでの星は最終的にこの白色矮星になります。我々もの太陽もあと50億年後にはこの白色矮星になります。

白色矮星は最初うちこそ余熱で明るく輝いていますが、あとは徐々に冷えていくだけです。星の最後の姿で、もうこれ以上目立った天体活動はしません。ごく稀に、連星系であったりすると、近くの星を飲み込んで、中性子星やブラックホールになることもあると考えられています。

この宇宙には冷えきった中性子星が多数さまよっていると考えられていますが、光も発しないので観測するのは極めて困難です。実際どれくらいの中性子星があるのかもよく分かっていません。

中性子星

質量が太陽の8倍を越える星は更に重力が強く、燃え尽きた後、電子の縮退圧では支えきれません。逃げ場を失った電子は原子核の中に潜り込んでしまい、陽子がそれを捉まえて中性子になります。こうなると今度は中性子間に反発力が働くようになってきます。これを「中性子の縮退圧」と呼びます。この中性子の縮退圧と重力が釣り合って形を保っている星が中性子星です。これは中性子と陽子から成る超巨大な原子核が宇宙空間にドカンと浮いていると考えることができます。

中性子星が生まれる過程は徐々に進むのではなく、収縮は一気に起こります。あまりにも急激な収縮のため、反発力で大爆発が起こります。これが超新星爆発です。超新星爆発は宇宙の中でも最も激しい現象の一つです。単一の星の現象でありながら、一千億もの星が集まった銀河よりも明るる輝くこともあり、我々の天の川銀河だけでなく、よその銀河で発生しても観測可能なものもあります。この超新星爆発で、外側の部分はほんとんと吹き飛ばされてしまいますが、中心部は更に強く圧縮され、コアの部分が中性子星として残ります。直径わずか10Kmくらい空間に太陽ほどの質量が詰め込まれています。なので密度は洒落にならないくらい高く、こちらは角砂糖一つで10億トン、例えばエベレスト山くらいの重さがあります。

白色矮星と中性子星は単に密度が違うだけではなく、電子の縮退圧で支えられているか、中性子の縮退圧で支えられているかという、物質としての在り方が根本的に異なっています。中性子星は、原子核の周りを電子が回っているという我々にお馴染みの原子モデルが成り立たない世界です。物質は想像もつかない振舞いをすることでしょう。

あまりにも異様な中性子星はよくSFの舞台にもなったりもします。有名なところでは、ロバート・L・フォワードの「竜の卵」とその続編「スター・クエイク」があります。中性子星に住む知的生命体「チーラ」と人類のコンタクトを描いた作品です。根本的な生命の在り様が異なるチーラは人類の100万倍の速度で活動していて、最初は原始的な生活をしていた「チーラ」が、コンタクトをとっている間に、あれよあれよという間に進化して、人類の科学技術もあっと言う間に抜き去ってしまいます。重力理論を専門とする研究者が書いただけあって、この作品理論に隙がありません。

更に重い星は?

中性子星として存在できるのは、元々の質量が太陽の20〜30倍くらいまでの星です。では更に重い星の場合はどうなるでしょう?中性子の縮退圧でも支えきれなくなると、もう自然界にこの重力を支えられる力は存在しません。なので物質は無限に収縮してしまいます。これがブラックホールです。

無限に収縮していくということは、吸い込まれた物質は全て、無限小の一点に向かって落ち込んでいくということです。この点の事を「特異点」と呼びます。もうこうなってくると頭の中にイメージすることすらできません。

あまりにも強い重力故、ある境界以上に近付いた物質は、例えそれが光であっても抜け出すことはできません。この境界領域のことを「事象の地平線(地平面)」と呼びます。

白色矮星や中性子星は、非常識なくらい高密度ですが、それでもまだ明確に実体を持つ物質です。それに対しブラックホールはもはや物質ですらありません。敢えて言うと空間の状態とでも言うべきものです。

ブラックホールはアインシュタインの一般相対性理論から導き出された一つの帰結ですが、同時に一般相対性理論の限界をも示してます。特異点では密度や重力が無限大になってしまうし、体積は無限小になってしまいます。つまり計算できないのです。更に事象の地平線では、外部から観測すると、時間が完全に停止してしまいます。こうなるともう、ブラックホールの内部に時空が存在できるのかどうかすら分かりません。

ブラックホールが存在することはほぼ間違いありません。間接的な証拠は沢山あります。2016年にはアメリカの観測チームがブラックホールの衝突による重力波の観測に成功しました。

しかし今の科学ではブラックホールの内部を厳密に記述することができません。そのためには、まだ人類の知らない新しい物理法則を発見する必要があります。

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